白無垢姿の麗子は、とても美しかった。今どきというか、一般的にはウェディングドレスを着ることが多いと思う。でも、当然のように和装での結婚式……田島家の伝統に則った結婚式だ。麗子の親族や友人達は、この結婚式の規模の大きさに驚いていた。ふと、麗子はご両親に夜這いのことは話したのだろうか? と、疑問を感じた。でも、すぐにそんな話が出来るはずがないだろうなと思った。
麗子は、この結婚式をとても喜んでいる。もともと大正ロマンが好きな彼女なので、和装の結婚式はむしろ望んだ形だと言える。日頃から和装をしている彼女なので、所作も含めてとてもしっくりきている。本当に美しくて、見とれてしまうほどだ。
「やっぱり、頭重いんだね。これ、何キロくらいあるだろう?」
純白で大きな綿帽子、内側には髪飾りもある。かなり重量はありそうだが、何キロもあるようなものではないと思う。清楚で荘厳な白無垢姿の麗子……一生大切に守っていきたいと思えた。ただ、幸せな気持ちになりながらも、どうしても夜這いの淫習のことが気になってしまう。この日までに麗子を妊娠させられなかったことも、僕の焦燥感を増している。
新婚旅行に行く5日間で、なんとか妊娠させなければ……そんな焦りでいっぱいだった。神前式……厳かな雰囲気の中、粛々と式は進められていく。こんなに親族がいたんだ……と、あらためて田島家のことや集落のことを考えてしまった。
「おめでとうございます。本当に綺麗だわ。裕也さんを……田島家をよろしくお願いしますね」
叔母が、笑顔で麗子に話しかける。相変わらず、年齢を感じさせない美しさがある。50歳を過ぎているはずだが、肌も張りがあって瑞々しい。本当に美しい女性だと思う。ただ、彼女のせいで、田島家の淫習は続いているような側面もある。彼女さえいなければ……そんなよからぬ事まで考えてしまう。
誓いのキスもなければ、キャンドルサービスもない結婚式……でも、重厚で厳かな式だ。必ず麗子を幸せにしようと思った。そして、式は終わった。すると、比較的近しい親族での二次会のようなものが始まる。正直、早く麗子と二人になりたいと思っていたが、拒否することも出来ない。
結婚式の時とは違い、砕けた雰囲気だ。酔っ払っている人たちも多い。麗子の親族も、楽しそうにしている。これはこれで楽しいと思えるし、幸せな気持ちになる。ただ、どうしても気になってしまっている。僕の親族の男性達の視線が、麗子に注がれているように感じてしまっている。
もちろん、誰も夜這いのことは口にしていない。でも、まとわりつくような目で麗子を見ている者もいる。そんな中、叔母のことが気になった。叔母は、一度帰宅して着替えて参加している。和装から洋服に替わっていて、場違いにセクシーな姿になっている。身体にフィットしたワンピースは、彼女の身体の形を強調しているように見える。豊かな胸、引き締まったからだ、フェロモンが湧き出ているようだ。
そんな叔母が、親族の中では若い源太さんと大広間から出て行った。発情したような顔……源太さんも、興奮したような顔だった。淫習のせいで、すべてが淫らに見えてしまっている。僕は、今さら現実感がないと思っている。本当に、夜這いは起こるのだろうか? そんな事を考えながらトイレに向かう。僕も、少し酔っている。でも、酔い潰れるほどではない。
トイレに向かう途中、夜這い部屋に明かりが灯っていることに気がついた。夜這い部屋は、変な造りになっている。この家の一番奥に位置していて、八角形の形だ。家の中からは、細い廊下を歩いて突き当たりまで行くような位置で、当然のことながら外に対して開く入り口もある。古めかしい引き戸だが、とても丁寧な大工仕事で作られていると思う。
恐らく100年以上は経っているはずだ。明治時代初期に火災で立て直したという記録があるそうなので、150年くらいだと思う。いったい、何人が夜這いに来たのだろう? 長い年月で、どれだけの夜這いが成立したのだろう? 色々なことを想像してしまう。
気になって、そっと夜這い部屋に近づいた。すると、かすかに声が聞こえる。と言うよりも、悩ましい声だ。驚いてさらに近づいていくと、叔母のあえぎ声が聞こえてきた。まさかの事態だ。夜這い部屋で、叔母が源太さんとセックスをしている? なぜこんな場所で? ドキドキしながらも、さらに近づいていくと、声が聞こえてくる。
「琴絵さん、イクっ、出ちゃいますっ」
源太さんの切羽詰まった声が聞こえる。
「フフ、良いわよ。とっくに上がってるんだから、気にせず中に出して良いわ」
あえぎ声混じりに答える叔母。ドキッとしてしまった。昔からよく知っている叔母のあえぎ声……聞いてはいけないものを聞いてしまった気持ちになる。でも、あの美しい叔母のあえぎ声だと思うと、恐ろしいほどに興奮してしまう。
「琴絵さん、イクっ、うぅっ」
「あぁ、出てるわ。ドクドク出てる。若返っちゃうわ」
幸せそうな声を漏らす叔母。あまりのことに、呆然としてしまう。
「麗子ちゃん、綺麗だったわね」
セックスが終わると、そんな会話を始める叔母。
「琴絵さんの方が綺麗だ」
源太さんは、きっぱりと言う。叔母に、惚れているのだろうか? そんな態度をしている。
「じゃあ、夜這いはしないの?」
「俺には琴絵さんがいるから……」
「あら、嬉しい。でも、麗子ちゃんまだ妊娠してないみたいだから、精子と卵子の相性が悪いのかもね。田島家のためにも、孕ませてあげないと」
「俺がしなくても、みんな狙ってるから。春江さんの代わりに、みんなに種付けされるから」
源太さんが、母のことを口にした。ドキッとしてしまった。母が、夜這いをされていた……考えたくないと思っていたことだ。でも、当然そうだったんだろうなとも思う。母も、美しい女性だ。叔母より若いし、セックスの相手としては最高なんだと思う……。
「春江さん、淫乱だったから。麗子ちゃん、代わりが出来るのかな? おぼこい感じだったけど」
「女は、見た目じゃわからないものよ。それに、若いでしょ? みんな、夢中になるわよ」
そんな会話を続ける二人。やっぱり、夜這いはまだ続いていたんだと、強いショックを受けてしまった。そして、そっと夜這い部屋からトイレに向かう。用を足そうとして、自分が激しく勃起していることに気がついた。麗子が夜這いされるかもしれない……そう思っているのに、異常なほどに勃起している。自分でも、意味がわからずに戸惑ってしまっている。
あまりに勃起しすぎていて、用を足すのも難しい状況だ。なんとか興奮を抑えて勃起を解消しようとするが、麗子が夜這いされる姿を想像すると、焦燥感はあるのになぜか勃起はさらに強くなってしまう。
仕方なく、勃起したままなんとか用を足す。飛び散らないように気をつけながら、なんとか終了した。そして、大広間に戻ると、麗子が色々な人にお酌をしていた。楽しげな雰囲気……でも、僕は男性陣の視線が気になってしまっている。麗子のことをいやらしい目で見ている……そんな風に思えてしまう。
そして、本当に長い一日が終わった。化粧も落とし、パジャマ姿になった麗子……疲れた顔をしている。無理もないと思う。麗子も家庭は、みんな仲が良い。お義父さんも、感極まって泣いていた。麗子も泣いていたし、僕もつられて泣きそうだった。愛情を込めて育てられた麗子……必ず幸せにしようと思う。でも、狂った淫習がある……なんとかそれを回避したいと思う。
そして、翌日昼近くまで寝た後、新婚旅行に出発した。正直、ハワイだろうがヨーロッパだろうが、どこでも行ける。経済状況は良好すぎるくらいだ。でも、麗子は海外旅行にはほとんど興味がない。結局、台湾に行く流れになった。新婚旅行で台湾は、あまりイメージがない。でも、日本の影響の色濃く残る古い建物や町並みに、麗子は強い興味を持っていた。
麗子は、淫習のことなんて忘れたように、そのことには何も触れない。古い町並みや、食事なんかを楽しんでくれている。
「日本語、けっこう通じるんだね。ご飯も、美味しい。臭豆腐も、食べてみる? 臭いすごいけど、美味しいのかな?」
麗子は、とにかく好奇心が強い。僕が臭いで一瞬で断念した臭豆腐も、本当に食べてしまった。
「美味しい! 臭い気にしなかったら、すごく美味しいよ」
麗子は、目を丸くしながら言う。眼鏡越しに見える瞳……パッチリした大きな瞳は、とても可愛らしいと思う。眼鏡を外すと美少女になる……漫画みたいな話だが、実際に麗子は眼鏡を外すと美少女になる。でも、僕は眼鏡をかけた状態の知的な雰囲気の彼女も好きだ。
そして、夜市にも行った。普通はもっと遅い時間に行くものだと思うが、早めの時間に訪れた。色々な屋台が出ていて、とにかく圧倒された。ルールのよくわからないゲームやエビ釣り、平日の夜でも、まるでお祭りだ。
「美味しい。牡蠣がこんなに入ってて500円くらい? 安いんだね」
小振りな牡蠣がたくさん入ったオムレツを食べて、また目を丸くする彼女。牡蠣は少し心配だったが、実際に美味しかった。この後のことも考えると、精も付けなければ……そんな風に考えてとにかく食べた。
ホテルに戻ると、予定通りに子作りが始まった。なんとかこの旅行で妊娠したい……そんな切羽詰まった気持ちもある。でも、冷静に考えると、この旅行で妊娠したとしても、そんなにすぐに妊娠が確定するわけではないと思う。そうなると、一定期間は夜這いを受け入れる必要があるのではないか? そんな心配をしてしまう。
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